映画本-い

いかにして100万円でインディーズ映画を作るか

映画製作における困難の99.9%はカネの問題であり、残りの0.1%は運とかそんなもんだ。ようするにカネがあれば映画は難なく撮れる訳で、逆に言えばカネがなければ、どんなに素晴らしい構想であろうが才能であろうが具現化するこたぁ無いというのが現実です。まあそんなことは書いても気が滅入るだけなので、この本を紹介しよう。

ここには友達家族信用仕事を失くしても、映画を作ろうというヒトには最適な実践的な映画づくりのノウハウが書かれている。しかもどこまでが法に触れず、この一線を越えると刑務所行きだという親切丁寧な助言付きだ。

著者はジョン・ウォーターズの映画を地で行くような映画キチガイ。低予算で自主映画を作り映画祭にも出すがいまだに全然売れず無名のままという経歴だ。そんな彼が徹底的にユーモア溢れる辛口で書いている。

たとえば「あんたのような典型的な低予算フィルムメイカーに撮影可能な映画は2タイプある。インディペンデント映画祭用の作品とBムービー売りの作品だ。このふたつは天と地ほどかけ離れているって印象があるけど、それは間違いだ。じつは、この二つ、ほとんど同じモノだと考えていい。両方とも、セックスや暴力の探求をする」

映画祭で受けるタイプ

+1.21世紀版にアップバージョンしたウディ・アレン風のクレバーでキレる台詞を喋りまくる系の映画

  1. 2.名詞重ね合わせタイトル映画  (『ガス・フード・ロジング』とか  『恋人たちの食卓』Eat Drink Man Woman なぜかいつも愛情を失ってしまったカップルが他人の訪問を受けることで自分たちをまったく新しい角度から見直すという内容が多い)
  2. 3.昔のノワール系映画をアップデート、もしくはずうずうしくマネして現代的なものに作り変えた映画
  3. 4.ゲイのインディ映画
  4. 5.「私はこの映画をデジタル・ビデオで照明も三脚も使わずに撮り切りました系」映画

具体的には10日の撮影で16mmフィルムを使い、ビデオで仕上げるまでの費用が、100万円。もちろんノーギャラ。映画祭等での上映プリント代は入っていない。まあそのあたりは配給会社に売れたり、映画祭上映が決まってから考えるということなのですね。その予算の配分とかいかにまわりを(騙して)協力を得るかとか、現像所との交渉の仕方や安く機材を借りるためのちょっとした駆け引きとか、監督らしい帽子(キャップ)は「オークランド・レイダース」か、それとも「ニューヨク・メッツ」がいいか、ドーナッツを喰うのは学生映画で大人の映画人はクリームチーズ入りのベーグルにする。ベーグルのいいところは電子レンジでチンするだけで翌日も食えることだなど役に立つ情報が満載だ。

でも結構マジメでもある。自主映画で一番大切なパートは音声で、これがダメだと撮影や演技が多少下手でも許してくれる観客でもちょっとでも台詞が聞き取れなかったりするともう観てくれないとか。すべてのショットを登場人物が入ってくるところからはじめ出て行くところで終える(「ウォーク・イン」「ウォークアウト」というらしい)と編集で最悪でもどうにかなるとか。

技術についても機材とかフィルム、ビデオについての解説も充実していて下手な日本の解説書を読むより参考になる。ただまったく基礎知識が無いとちょっと難しいかもね。でも自分にわかるところだけ読んでも充分に面白いしなによりも日本もアメリカも自主映画の現場ではそんなに変わらないんだなあということがよくわかる。

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