本-え

エンパイア

エンパイア

エンパイア

バブルの時代、アメリカのシンボルが次々と売り出された。そのときエンパイアステートビルの所有権という不思議なものも売り出された。これは、テナントの賃借権とは別のもので、手元にはカネは入らず、ただ「このビルを持っているんだぜ」という一種の見栄なもの、ゴルフ会員権のようなものといえばわかるでしょうか、そういう商品なのだ。

さてそれを手に入れたのは誰か。横井英樹だった。それも異端の金持ちはこっそりと買ったために、バブル崩壊後その権利の売買を巡って実子庶子を含む一族の骨肉の争い、ドナルド・トランプをはじめとするニューヨークの不動産王たちとの争いが始まる。多大な犠牲とカネと時間を費やしたこの闘いの終わりは虚しいものだったことだけは書いておきます。

これはノンフィクションであり、半端なフィクションよりはるかにオモシロイ。途方もないエゴの固まりの人間の剥き出しの争いは壮絶です。すべての登場人物に距離を置いて取材して、日本についても経済社会情報についても的確だ。それにしてもすべての騒動の種であり、彼のカネの出所はあのホテル・ニュージャパンの土地というのはなんとも象徴的ではないか。そして融資元は潰れた千代田生命。911のあとふたたびニューヨーク一高いビルとなったエンパイアステートビル。驚くことにテナントのほとんどは小さな会社事務所の集合する雑居ビルだということ。結局変わらなかったのはそれだけだという皮肉な事実。

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