映画-き, 映画-と

喜劇・特出しヒモ天国

ラピュタ阿佐ヶ谷

松竹を出た森崎東が、東映で撮った唯一の作品。

芹明香がすばらしい。彼女と拓ボンの映画だねこれは。

主役は、クルマのセールスマンがひょんなことから、ストリップ小屋の支配人になった山城新伍なのだが、拓ボンと同じフレームに入るとぜんぜんパワーが違う。監督は狂言回しとして新宿芸能社シリーズの森繁のような軽妙さを狙ったんでしょうが、山城新伍がやると軽薄さと胡散臭さしか残らない。主役を背負っちゃうのかな。

それに比べると、川谷拓三の狂気っぷりはすごいね。逆に云うと、主役の演技じゃないんだけどさ、プログラムピクチャーならでは許される幸福な役なんだと思う。

前半は、登場人物紹介に時間が割かれ、なかなかだれが主役なのだかわからない、オムニバス形式なのだけど、小屋に転がり込んできた、アル中の汚い女だった芹明香が、ステージに立ち自由奔放に振る舞い、張り込みをしている刑事の拓ボンと絡むあたりから、俄然調子が出てくる。深作、工藤監督特別出演の屋台のシーンも必見。

下条アトムが扮する聾唖者とその妻の件も、松竹なら成立する情緒的なシーンだけど、東映ではすべりがち。低予算でありながら冬と夏を描ききった、撮影の古谷伸の手腕も見事です。

支配人をやめて、池玲子のヒモになった山城新伍が、他の踊り子とヒモたちと付かず離れずの関係で、旅公演に出るあたりから、森崎映画らしさを取り戻す。

葬式のシーンで、祭壇の後ろのくらがりに気だるくうずくまっていた、芹明香が、静かにつぶやくように「黒の船唄」を歌いだすとともに、何かが乗り移ったようにゆったりと踊りだす姿にはっとした。あの動きはものすごく鍛えられた身体じゃないとできないと思うのだけど、彼女自身、見た目は肉感的でもないし、そこまでは、踊りというよりショーという形で、半端ものの異形のキャラクターとしての存在だけで、きちんとはまったく見せずにいたのに、この瞬間なにかが、内側から抉り出されるように噴出してくる力強さがスクリーンを支配していく姿に圧倒された。

Pocket
LINEで送る