映画-た

大殺陣

工藤栄一監督

前から観たい!っと思って検索したら、オンラインで東映ものがたくさん出ているのですね。Yahoo!オンラインシアターで観ました。 367円也。500kでも最後の動きの多いシーン以外は問題なし。ただシネマスコープの両端を少し切ってます。

『十三人の刺客』、『十一人の侍』と合わせた、集団時代劇の三部作の2作目です。でもアナーキーさは最終作のようです。こんな映画撮ったら普通は戻って来れないよ。

超弩級の映画ですね。ハアー、観終わるまで三日かかりました。体力が要ります。思わず呆然としました。

はじめからモノクロの冷たい画面のロングショットで、ものすごい長回しが延々と続く。説明カットが無く、物語も裏でどんどん進むのでなかなか追いつけない。それでも1時間を過ぎて安部徹扮する、兵学者、山鹿素行が出てくるあたりから、一気に動き出す。

60年代末期の政治の季節を予見し、そのまま時代劇に写し、愚直なまでに正面から描いている。それが若いし、分かり易すぎる。でも青くはない。その何の衒いの無さが工藤映画の魅力なのだ。

でも64年製作なんだよね。その鬱屈ぶりがスゴイ。それまでの東映明朗時代劇 がなぜ一気にこんな風に変容できるのか。

暗殺のシーンというかシークエンスが延々と続き、手持ちカメラと望遠レンズを使いロングで大群衆を切り取っている。 エキストラのモブシーンとかとはちがう、異質な風景。デモの光景のニュース映像のようだ。その迫力に圧倒される。

時代劇では内田吐夢の『宮本武蔵 一乗寺の決闘』の冬の泥田を武蔵が逃げるシーンは有名だけど、それ以上に、新吉原を舞台に所狭しと駆け抜け、お歯黒どぶに飛び込み、泥まみれのまま這いずり回る。その脇を水死体が流れていく、なんて言う、唖然とする斬り合いが白昼の悪夢のように続く。

大坂志郎の家族思いの浪人がテロル(暗殺)に参加する朝のシーンは、「映画監督工藤栄一 光と影」で読んでいたが、心から戦慄した。心情的に突き抜けている。あれがシナリオに無かったというのは驚きだ。大坂志郎のベストアクトではないだろうか。

怖い映画です。人間の内側に孕んでいる狂気。ちょっとしたことでそれがいとも簡単に飛び出してくる。 そういう危険な時代の予兆、空気みたいなものを描こうとしている。

新しい時代劇を模索していく過程で、集団時代劇を生み出したが、それにひとりで幕を引いてしまったような気がします。早すぎた傑作です。

オンラインシアターに、まだ観てない作品が何本かあった。2月は 工藤栄一強化月間にしよう。

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