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日本黒社会 LEY LINES

日本黒社会?LEY LINES?

 99 三池崇史(中野武蔵野ホール)

 黒社会3部作と言っても、全部独立した話で、何の共通点はない。あるとしたらやり場のない憤りが全編を覆う。日本人が誰もがどこかで感じていることをエンターテインメントの枠の中で映画として昇華しているところだろう。それが三池監督の手腕と言えよう。

 ストーリー、かなり、書いてしまうけど、是非見て欲しいです。

 主人公は、田舎の中国人帰国宿舎に住む20代の兄弟とちょっと足りない友達(田口トモロヲ)。パスポートを申請するが、保護監察中で無理と言われる。どこに生きたいというのではなく、ここにいるのがいやだと言うだけだ。

 盗んだバイクを田園風景の中、走らせると台湾映画のようだ。ベトナム人の故売屋から金を巻き上げると、彼らは新宿へ出ようとする。だが、怖じ気付いた何人かは残して。ここを数人の仲間が立ち尽くす中、電車が入ってきて主人公と悪友が乗り込むワンカットの手持ちカメラは、感情が押し詰まっていい。車内に座っている女子高校生が、普通のソックスをルーズソックスにはきかえるところが、艶かしくシーンの上手いブリッジになっている

 新宿に出た彼らは、娼婦に騙され有り金を取られる。ふとしたことでトルエン売りを始めることとなり、ヒモから逃げてきた娼婦と共同生活を送ることとなる。そこにはセックスも有りだが、陰湿にならず、あっけらかんと描かれているのは、ユーモアがあり(そう、さりげないユーモアが上手い監督でもある)女が強いのが最大の特徴じゃないだろうか。生き生きとしているのだ。 物語と主人公に過多の感情移入を誘うようなアップの撮り方はせず状況的に、フルショットで撮っているが、いつの間にか次第にこちらの方から感情的にのめり込んでいく のだ。

 やがて、彼らは、上海マフィアから金を奪い、日本から脱出しようとする。どこ行こうではなく、ここでは無いどこかへ行こう。これが、黒社会3部作を通した、メッセージのような気がする。ただ「その答えは無いんだけどね……。」とも言っている。 それがこの作品を支える魅力とアナーキーなパワーではないだろうか。

 奪った金をもって逃げるオートバイのシーンではちょっと涙腺が弛んだ。ちょっと足りない友達は死に、母親に金を届けるために故郷に帰る、3人。金を届けるアンバー系の茶のフィルターを意識的にかけた風景が不思議な世界を現わす。自転車の疾走シーンにも泣ける。近頃の日本映画は、一緒に走るシーンに手を抜きすぎていると思う。しかし、弟も殺されてしまう。帰りの2輛編成の電車の中、前方を凝視する主人公にそっと、手を回し抱きしめる女。

 ブラジルに密航する漁船に乗り込もうとすると、上海マフィアが待ちかまえていた。(竹中直人怪演だ)銃撃戦の中、海に飛び込むふたり。

 ラストは、美しすぎて切なくて、このために、この映画があったのかというシーン。いつまでも終わらなくても良かった。永遠と言う言葉が似合う。いや言葉にするには惜しすぎる。素晴らしい青春映画。大傑作だ 。

 最後に嫌だが、言っておくとたぶん映倫通す為にピーの音を入れたんだと思うのだが、ぶちこわしだ。それと、なんでこういう映画のパンフがないの?くだらねえのは高い金払わせて(買わないが)売ってるくせに。誰かが本気になって作ったりすりゃ良いんだよ。見て良さがわかんない奴は、映画の敵だぜ。

(角田)

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