本-か

解放の日

解放の日 (角川文庫 マ 10-5)解放の日 (角川文庫 マ 10-5)

元SAS隊員のアンディ・マクナブの新作は、911直後の南仏が舞台だ。主人公のニック・ストーンは、アメリカの指令を受けアルカイダの資金源を断つ諜報活動の下請けを命じられる。もちろん失敗すれば、アメリカは関与を否定し彼は見捨てられる。
今回は、エジプト人工作員2人とチームを組み、ハワラと呼ばれる、イスラム圏独自の送金システムの中継地点となる現地の工作員を秘密裏に捕まえ、アメリカの戦艦に送り込むのだ。
一見きらびやかな、ニース、モナコ、カンヌという裕福なリゾート地の裏側にある監視カメラや、イスラム圏からの移住者たちの暮らすアパートや町の描写。実際の尾行、誘拐のテクニックや現場の緊張感は、この作者ならでは、今の世界を読み取る目線の確かさは今回も健在だ。
登場人物たちにも血が通っていて、単純に良い役、悪役と割り切れない複雑さもストーリーを豊かにしている。
そして本当にこれが完全なフィクションとは云えない世界に、いま暮らしているのだと思うと戦慄する。

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